2016/04/03

Mo 11 ゴーストゲートの死闘

【ヴェナサの手記】

収穫の月21日(6日目)

 朝だ。
 朝食をポットの中のラット亭で済ませて、ゴーストゲートへ向かう。





 何、これ。
 ドブ池の周りで動物がたくさん死んでいる。
 原因は指輪? 強力な付呪が施されているのを感じる。たちの悪い魔法が。
 触れない方がいい。








 気を取り直して旅路を再開したところ、ヴィアトリクス・ペティリア(Viatrix Petilia)という婦人と出会った。
 ゴーストゲートの寺院へのエスコートを必要としているそうだ。二日以内にたどり着かなければならないという。安全にそこまでたどり着けたら報酬を払うとのことだし、目的地が一緒なので、案内をすることにした。







 右手に怪しい遺跡らしきものが見える。デイドラの魔力を感じる。近付かないでおこう。







 空から鳥のような動物に襲われた。これが話に聞いていた、クリフレーサー(Cliff Racer)だろう。
 この巨体をいかに空に飛ばしているのか、興味がある。羽に秘密がありそうだ。錬金術の素材として、空中浮揚のポーションを作れるだろう。







 ゴーストフェンスが見えてきた。これに沿って歩けば、フェンスの裂け目であるゲートにたどり着けるだろう。







 錬金術の素材を集めながら進んでいると、ヴィアトリクスに文句を言われた。あと一日半しかないと。
 彼女の声は本当に耳障りだ。







 ゴーストゲートの前にて、一人の青年がクランフィア三体に襲われていた。
 助太刀に入り、何とか三頭とも殺すことができたが、その青年は私を非難してきた。彼一人でもどうにかできたと。
 そうは見えなかったが、どうでもいい。放っておこう。
 あと、デイドラの心臓はもらっていく。







 スイッチを操作して門を開け、ゴーストゲートの中に入った。なるほど、空は異様な禍々しい色をしている。







 ゴーストゲート内の、石碑? の前に着いた。
 ヴィアトリクスは私に「心づけ」をくれた。労多くして益少ないし。まあ、こんなこともあるだろう。



* * * * * * * * * *




 ゴーストゲートの外側に戻ってくると、まだあの青年はその場にいた。
「ねえ、私はヴェナサ、ここではフリーランスの冒険者。あなたは――」
「ああ、またあんたか。あのクランフィアを殺すのを手伝ったアウトランダーだ。頼んでもいないのに」
 憎まれ口は相変わらずのようだけど、じっくり見たところ、怪我がひどい。立っているものやっとという有様だ。これは放ってはおけない。
「俺だけで十分どうとでもできた。あんたが邪魔をする必要なんてなかったんだ。ゴホッ」
「そう。あなたの怪我の具合から判断するに、あなたは殺される直前だったように思えるけど」
「ハッ! ゴホッ、俺はただ……やつらと遊んでたんだ……俺の戦闘技術の鍛錬のためにな! だがあんたは飛び込んで来て英雄を演じたかったんだろう、違うか? まさしくアウトランダーだ……。次は、あんたに関係ないことには首を突っ込むなよ」
 ちょっと私、怒ったかもしれない。相変わらず顔には出ていないと思うけど。
「私はあなたの命を救った。でも感謝は期待しないことにする。で、あなたは治療して欲しくないみたいね、大量出血で死ぬほど技術を鍛えるのに忙しいのなら」
「俺は平気だ! ゴホッ、ほら、ただのかすり傷だ……うわ。ゴホッ、神々よ、血が、俺が思ったよりも……」
 青年はひどく咳き込んだ。吐き出したものにはいくらか血も混じっている。
「シェオゴラス、俺の脚が……クソッ……ううううう……」
「そう。あなたは誰の助けも要らないのでしょう? 訓練を続けたらいい。すぐにもっとたくさんのデイドラがやってくるでしょうね」
「待て! 頼むから……コホッ……分かった。俺は……助けを借りられる……かもしれない」
「かもしれない?」
 我ながら、少し意地悪がすぎただろうか。青年はため息をついた。
「悪かった。あんたが正しい。何に関してもな。あんたは俺の命を救ってくれた。だが……治療を受けないなら……あまり長くじゃない。俺はポーションを使い切っちまった。マジカも。それに……ゴホッ……実のところ、ほとんど何もかも……」
 膝から崩れ落ちた青年を支え、私は戦士ギルドでもらった体力回復のポーションを差し出した。しかし、もう腕を持ち上げる力すら残っていないようだ。よくこの状態で喧嘩腰になれたものだ。青年の腕を支え、ポーションを飲ませてやる。
「ありがとう。少し時間をくれ……俺の脚が体重を支えられるか見てみる……」
 やはりポーションの効果はてきめんで、彼の傷は塞がり、自力で立ち上がってみせた。
「神々よ……良くなった。もうあまりデイドラにかじられたような感じはしない。ありがとう。何もかもが……とても恥ずかしい。俺は強い戦士になろうとしているんだ。だがその道のりはまだまだ遠いみたいだ」
「強い戦士になりたいの?」
「俺は強い戦士にならなければならないんだ。そう期待されている。だが俺は自分の全ての時間を訓練に費やしたのに、明らかにまだ十分じゃない。クソッ! アウトランダーになんか助けられたと知ったら、俺の部族にどう思われるだろうか? アウトランダーだぜ、アズラにかけて!! あー……侮辱するつもりはないんだ、でもかっこ悪かっただろう」
 部族。ああ、そうか、この人はアッシュランダーか。確かにそれっぽい見た目をしている。それなら、私の依頼はこなせたのか。依頼主としては、あのまま彼が死んだ方が嬉しかっただろうけど。
「いいえ、そんなに悪くはない。奴らは強敵だった、クランフィアだもの。それに三頭もいたのだから」
「ありがとう。だがあんたは理解してないんだ……でもどうやったら理解できる? あんたは知らないんだ、俺が誰なのかも、何をしなければならないのかも、なぜ……」
「なら教えてちょうだい」
 そう、確かに知らないから理解もできない。ならば知ればいいだけだ。
「そんなに単純な話じゃないんだ。自由に話せることじゃあない、特にアウトランダーとは。俺が言えるのは、俺はゴーストフェンスの内側で果たすべき神聖な任務を帯びているってことだ、俺の同胞のため……そして他の人々のために。だが俺はここで一週間も訓練したのに、フェンスのこっち側の生き物にさえ対処できないんだ!」
「それが聖なる任務なのなら、神々かデイドラか何かがあなたを守ってくれるのではないの?」
「ハッ。それは俺の母さんが言っていたことさ。母さんはそういう強い信仰心を持っていた……母さんの信じている神々にも、俺にも。だから俺は成功しなければならないんだ。母さんを落胆させるなんて考えるのも嫌だ。だけど母さんのような信仰心を持っているか分からない。それが俺の問題なのかもな」
 それだけ言って、青年は黙りこんでしまった。
「あなたのお母さんってどういう人なの?」
 言ってから、この話題はちょっと違ったかもと気が付いたが、言ってしまったものは仕方ない。
「母さんはアヘンムサ(Ahemmusa)の賢女だったんだ。でも今は俺達はキャンプから離れて暮らしている。多分、マブリガシュ(mabrigash)と呼ばれるんじゃないかな」
「そのマブリガシュって何?」
「人々はよく、部族から離れて暮らしている賢女のことを邪悪な魔術を扱い男の生命のエッセンスを盗む魔女だと呼ぶんだ。でも母さんは良い目的のためにしか魔法を使わない」
「そうなの」
 会話が途切れてしまった。
「あー……神聖な任務だと言っていたわね?」
「言っただろう。それについて話すことはできないし、いずれにせよあんたは理解できないさ」
「そう……それはゴーストフェンスの中で果たすものなの?」
「あんたは俺より強い。あんた、ヴェナサっていう名前だと言っていたよな、フリーランスの冒険者の。教えてくれよ、ヴェナサ、ゴーストフェンスの内側に入ったことはあるのか?」
 彼は私がヴィアトリクスを案内して中に入るのを見ていなかったのだろうか。それだけ意識が朦朧としていたのか。
「さっき行ってみたけど、あまり積極的に行きたい場所じゃなかったわね」
「だと思った……あんたは灰の怪物にも対処できるほど強いか、すぐそれくらい強くなるんだろうな。ひょっとして……いや、忘れてくれ。あんたを信じる理由なんてない」
 何だろう。ちょっと気になる。
「私はあなたを助けた、でしょう?」
「あー……そうだな、だけどどうやったら分かるんだ、あんたの動機が……クソッ! シェオゴラスよ、こんな風に考え続けるなんてできるか。俺にはやらなくてはならないことがあるんだ、ヴェナサ、俺の技術を上げるのを手伝ってくれないか? 俺に訓練を付けてほしい」
 何やら思いもよらぬ方向に話が進んできた。
「俺の同胞がこれを知ったらひどい考えだと思うだろうが、俺には他の方法が見つからないんだ。俺自身だけでは訓練はできない。道標がいるんだ、で、あんたはそれができそうだ。アウトランダーであれそうでなかれ、あんたはこれまで出会った人達の中で俺を助けてくれた唯一の人だし、ひょっとしたらそれは何かを意味しているのかもしれない。それに俺は役に立たない旅の連れじゃあない。俺は戦えるし、いくつか呪文も使える、それに大体は自分の世話は自分で見れる。あんたの重荷にはならないし、実際、俺は有能な味方になれるさ」


「俺は空中浮揚できるし、水中呼吸もできるし、自分で自分を癒せる――もちろん十分なマジカがあればな。走るのは速いし、あんたのために武器を修理してやることだってできる、適正な道具があれば。クソッ、俺はなんて馬鹿だ! 俺はまだ自己紹介をしてないじゃないか! 俺はアヘンムサ部族のジュラン・コーシバエル(Julan Kaushibael)。あー……まあ……実際は追放者だが……んー……複雑なんだ。で、あんたの返事は、ヴェナサ? 俺達、良いチームになれると思うか?」
「そうね……私が良い教師になれるかは分からないけど、しばらくの間ついて来てもいい」
「やった! 認めるよ、俺一人だけでこの辺をぶらぶらしてて、孤独だったんだ。先頭を行くのはあんただ、俺はヴァーデンフェルのことはあまりよく知らないからな。実のところ、今までの中で、今が家から一番遠くまで来ているんだ。だが……ほら……俺達はここにいるのだから、ゴーストフェンスの中へ行ってみてもいいんじゃないか? 遠くまでじゃない、ちょっとゲートの中に入るだけ。俺は慣れなきゃ『いけない』んだ、ただほんの……」
「分かった。確かに慣れというのは大事だと思う。行ってみましょう」
 さてさて、おかしなことになった。ジュランは宣言した通り、私の後をついて来る。ちょっと落ち着かない。







 私がゴーストゲートの中に一歩足を踏み出した時、ジュランはまだゲートの中にいる時に、背後からジュランのうめき声が聞こえた。
「うう……わ、悪い。これに対する準備はできていたと思ったんだが……これは……俺はここに来なければならないことは分かってる、だけどできない。まだだ、今はまだ。頼む、アルムシヴィの仲裁を唱えさせてくれ、俺たち二人をここから離れさせるために。頼む。俺の頭は……俺は……」
 頭を押さえ、尋常ではない様子だ。
「分かった、ジュラン。好きなようにしていい。ここから離れましょう」
「ありがとう」
 それからジュランの行動は早かった。彼が呪文を唱えたと思ったら、あっという間にアルド・ルーンの寺院の前。聞けば、最寄りのトリビューナルの寺院の前へワープする呪文だという。とても便利そうだ。
「で、大丈夫なの、ジュラン?」
「わ……悪かった、あんなことになって。神々よ、あんたは俺のことを完全な臆病者だと思ったに違いない。だがあんたにこれを誓う。俺は戦士だ。俺は戦いから逃げ出したりなんかしない、それに死を恐れない。レッドマウンテンの灰の化け物を恐れているわけじゃないんだ、もっと別の……あの変な夢に関することなのか……」
「変な夢って?」
「俺はよくレッドマウンテンを登っている夢を見るんだ、暗くて、空気は灰に満ちていて、俺の目や口に入ってくる。そして動き続けるのがどんどんきつくなってくるんだ。それで、あの声が全部俺の周りに取り巻いて、囁きかけてくる……」
「何を囁きかけてくるの?」
「分からない。何を言っているのか理解できないんだ。でも……あー……何か良くない感じなんだ。つまり、あんたはダゴス・ウルについては聞いたことあるだろう? アウトランダーであっても奴のことは知っているはずだ――レッドマウンテンの地下に潜む悪魔、だろ? 人々に夢を送ることで狂気に陥らせていると言われている。なら……」
「誰でも時には奇妙な夢を見るけど、それは何も意味していない」
「もちろん。ダゴス・ウルは俺達の歴史と伝説において強大な存在だ、だからたくさんの人々が奴の夢を見るんだろう。それは何でもない。俺は確かに狂ってはないし、そうなるつもりもない!」
「じゃあなぜあなたの夢は、レッドマウンテンに足を踏み入れることができないほどあなたを煩わすのかしら?」
「そうじゃないさ。つまり……そうはならないって意味。道理が通っていないことは俺にも分かる。俺に少し時間をくれ、頼む。俺の訓練をしていればいい。考えないでいることが必要なんだ」
「そう、分かった。ちょっと休みましょう」
 さて、どこの酒場で休むか。ポットの中のラット亭は、依頼主がまだいてジュランと顔を合わせたら嫌なことになりそうだから、この町にあるという別の宿屋にしよう。


* * * * * * * * * *


【ヴェナサの手記】


 宿屋へ行く途中で、トーリョンと出会った。乞食の姿ではなく、見習いのローブを着て。
 支部長は彼が魔術師ギルドに再加入することを許してくれたようだ。よかった。
 トーリョンはアナレネンの見習いに再度戻り、野外へ出て錬金術の素材を集めることを追加の仕事としてもらったそうだ。これで家族を養うこともできるみたい。本当によかった。
 これまでの一生で聞いてきたよりもたくさんの感謝の言葉を言われて、飽和状態だ。
 彼はお礼として、素材を集めに行く際に私が必要とするものがあったら、それも集めてくれるという。それはとてもありがたい申し出だ。







 アルド・スカー亭(Ald Skar Inn)にて、旅の疲れを癒した。ジュランはマズテ(Mazte)が好きみたいなので、一杯だけおごってあげた。というより、ジュランは1ゴールドすら持っていない。アッシュランダーとはそういうもの、とのこと。これからは食費が二倍になるのか、予定を計算し直さないと。







 少しでも節約するために、戦士ギルド支部長のパーシウスに頼みこみ、ジュランもここで寝させてもらうことに同意してもらった。
 これで宿代は浮く。


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後書き

 ということで、Morrowindの中でも屈指のいらつくクエスト"Viatrix, The Annoying Pilgrim"(ヴィアトリクス、腹立たしい巡礼者)と、大型人気mod"Julan, Ashlander Companion"のジュラン初登場でした。公式でそう言っているけど、「ボーイフレンドmod」じゃないですからね!

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